普段、わたしたちが何気なく使っている「書籍」や「雑誌」という言葉。
では、「書籍と雑誌の違いは?」と聞かれたら、皆さんは正しく答えられますか?
なんとなくはイメージできるけれどハッキリとわからない…なんていう方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では「書籍」と「雑誌」の違い・見分け方について説明していきます。
あわせて「ムック」や「本」との違いも紹介するので、ぜひ頭を整理していただければと思います!
「書籍」とは
まずは「書籍」と「雑誌」、それぞれの定義を説明します。
「書籍」とは
「書籍」とは、一般的には「物語などの文章・絵画などが書かれた複数の紙をまとめて表紙をつけ、保存しやすいように綴じられたもの」を意味します。
正確な意味を知るために、辞書でも「書籍」と引いてみましょう。
書物。本。図書。しょじゃく。
名鏡国語辞典
[個人の知識の源泉となり、生活を豊かにするものとしての]本。
新明解国語辞典
なお、最近では「電子書籍」の登場によって、「物語などの文章が電子的に記録されたもの」まで「書籍」と言うことが一般的になっています。
「書籍(紙に印刷されたもの)」と「電子書籍」を区別するために、あえて前者を「紙の書籍」と言うことも増えています。
小説やビジネス書、漫画の単行本(単独で発行される本のこと)、参考書、写真集などは書籍に分類されます。
では、続いて「雑誌」についても見ていきましょう。
「雑誌」とは
雑誌は、出版物のなかでも、定期的に発行される「定期刊行物」のことを指します。
ここでいう「定期刊行」とは、たとえば以下のパターンがあげられます。
- 週刊
- 月刊
- 季刊
- 隔月刊
雑誌によって発行頻度はさまざまではあるものの、いずれも「定期的に出る」ところがポイントです。
雑誌についてのよくある勘違い
ここからは、雑誌についてのよくある勘違いを以下で紹介します。
勘違い1:サイズが大きいものが雑誌でしょ?
「書籍は手におさまるような小さいサイズの本で、雑誌は大きなサイズの本でしょ?」と言われることがあります。
しかしながら、書籍と雑誌を分類するにあたってサイズはまったく関係ありません。
たとえば、大きなサイズの参考書や写真集は、定期刊行されていない限りは書籍です。
逆に、サイズが小さいなどで一見雑誌のように見えない本でも、定期刊行物であれば雑誌に分類できます。
勘違い2:紙がツルツルしているものが雑誌でしょ?
雑誌というと、用紙がツルツルとしているものを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか?
ただ、実際には、使用する用紙の種類で書籍・雑誌が定義づけられるわけではありません。
雑誌によくツルツルとした光沢がある紙が使われる理由は、雑誌のコンテンツ(中身)によるところが大きいです。
詳しく説明すると、ファッション誌、料理雑誌、スポーツ雑誌などをイメージしてみてください。
いずれも「写真」が多用されていますよね。
ツルツルとした用紙の一例として「コート紙」がありますが、そのような光沢のある紙は写真を美しく見せる効果があります。
なお、漫画雑誌や週刊誌によく使われる色のついた用紙は「印刷せんか紙」「マガジンペーパー」などといいます。
これらはちょっとザラザラしていますよね。古紙が使われていることもあって、用紙のグレードは、高級なものに比べるとやや低めです。
漫画雑誌の場合、あまり写真をキレイに見せる必要がないので、このような用紙が使われているようです。
「書籍」と「雑誌」の見分け方
「書籍」と「雑誌」は、それぞれの見た目で、なんとなく「これは書籍だ!」「これは雑誌だ!」とわかる場合も多いです。
ですが、先ほどご説明した通り、一見、書籍のように見えても雑誌だったりその逆であったりすることも。
そこで、ここでは「書籍」と「雑誌」を簡単に見分ける方法をご説明します。
裏表紙にある「バーコード部分」に注目してください。
書籍の場合
書籍には、2段のバーコードが印字されています。
2つのバーコードをあわせて「書籍JANコード」といいます。
それぞれのバーコードは、上段が「ISBN」、下段が「日本図書コード」と呼ばれます。
簡単にそれぞれの特徴についてご説明します。
- ISBN:「International Standard Book Number」の頭文字をとったもの。世界共通で書籍を特定するための番号
- 日本図書コード:図書の分類(発行形態、内容など)や定価の情報が入っている番号
このようになっています。
なお、裏表紙には他にもいろいろな情報が記載されているのですが、ここでは割愛します。
雑誌の場合
雑誌も、裏表紙を見てみてください。
こちらはバーコードが1段のみ。これは(本・雑誌以外の)一般的な商品にも付けられる「JANコード」です。
書籍に付いている「ISBNコード」は、雑誌には付いていません。
その代わりに、雑誌には5桁の「雑誌コード」という数字が設定されていますが、この数字にはバーコードはありません。
話をまとめると、書籍はバーコードが2段、雑誌はバーコードが1段、ということです!実はとても簡単に見分けることができるのですね。
雑誌には「販売期間」も定められている
もうひとつ、雑誌ならではの特徴として「販売期間」が決められていることが挙げられます。
この期間を過ぎると、書店は在庫を抱えている雑誌を「返品」することができなくなります。
返品ってどういうこと?誰に返すの?
そう感じますよね。これは、出版業界ならではの流通の仕組みの話が関係してきます。
一般的に流通している書籍や雑誌の多くは、出版社から「委託」される形で、書店が「販売」をしています。
さらに、出版社と書店の間に入り、仕入れなどの業務を専門に担当する「取次会社」という存在もあります。
流通の話はここではあまり深掘りしませんが、簡単にいうと、出版社から委託されている商品(書籍や雑誌)は、書店は「あまり売れない」などと考えた場合、自由に返品をすることが可能なのです。
この返品についてのルールが定められており、書籍は返品期限なし(基本的にはいつでも返品できる)のに対し、雑誌は定められた期限を過ぎると返品できない、というわけです。
次々に最新号が出る雑誌は、そもそも古くなってくると売れないですからね。書店は売れ残りそうな場合、期限までに返品しているところがほとんどです。
「ムック」とは【書籍?それとも雑誌?】
本や雑誌のほかに「ムック」という言葉を聞いたことがある人も多いと思います。
書籍のような、雑誌のような、なんとも中途半端な雰囲気をまとったムック。その定義や特徴について紹介します。
ムックとは、雑誌のような形態の「書籍」のこと
まずはムックの意味を押さえていきましょう。
《magazineとbookの中間の意を表す造語》内容は単行本でありながら、発行方式や編集形態が雑誌のような出版物。雑誌風書籍。
デジタル大辞泉
上記にある通り、ムックとは「雑誌(magazine)」のような形式でありながらも、分類としては「書籍(book)」です。
ムックの特徴
ムックは、以下のような特徴をもっています。
- ISBNがある(つまりは書籍)
- 扱うテーマは1つ(特化している)
- 販売期間が決められていない
一般的な雑誌は、その雑誌のコンセプトや編集部の考えの下、複数のテーマの記事を扱っていきます。
たとえば「ファッション誌」ではあっても、中身を開けば流行の洋服の紹介はもちろん、恋愛の話題に、グルメや映画情報、そしてコラムや占い…みたいなことはよくありますよね。
それに対し、ムックは1冊で1テーマが基本。
たとえば「コーヒーのムック」、「キャンプのムック」、のようなスタイルです。
また、ムックは雑誌とは異なり販売期間(返品期限)が決められていないので、雑誌よりも長く書店に置かれる傾向にあります。
このような特徴からは、やはりムックは書籍に近いことがわかります。
「本」と「書籍」の違い
最後に「本」と「書籍」の違いについても触れておきましょう。
結論、「本」と「書籍」は基本的に同じものを指しています。
「書物」や「図書」も同様で、これらはすべて「書籍(≒冊子としてつくられている読み物だが、雑誌ではないもの)」を指しています。
ただ、日常会話では「本」と言うことの方が圧倒的に多いはずです
「どんな本が好き?」とは言っても、「どんな書籍が好き?」と言う人はあまりいないはず。「書籍」を少しやわらかい言葉にしたものが「本」と考えておけばよさそうです。
まとめ:書籍と雑誌には、それぞれ別の特徴があります!
普段、あまり深くは考えずに「本」「書籍」「雑誌」といった言葉を使っている方も多いと思います。
あらためて、登場した用語を簡単にまとめておきましょう。
- 書籍:文章などが書かれた紙をまとめて表紙をつけ、保存しやすいように綴じたもの(ただし、本文データを電子的に記録した電子書籍もあり)。※「本」や「書物」ともいう
- 雑誌:「定期刊行物」のこと
- ムック:分類としては「書籍」
ぜひ、今後の本探しの際にお役立ていただければ幸いです。