わたしたち現代人の日々は、仕事に家庭に趣味に…やることが山積みですよね。
「忙しくて本を読む時間が取れない!」
「本を読んで、もっと人生を充実させたい!」
そんな思いを抱えている方におすすめしたいのが、今回ご紹介する一冊、荒木博行著『自分の頭で考える読書』です。
タイトルだけ見ると、よくある「読書術」の本かな?と感じるかもしれませんが、本書は単純な読書ノウハウの指南本ではありません。
より素晴らしい読書体験をするためにはどんな心構えが大切なのかもわかります。
本書を読めば、単なる「情報収集やスキル習得のため」の読書を超えた、豊かな読書体験ができるようになるでしょう。
これまで読書のノウハウ的な本にばかり興味が向いていたという方、本を読む意味がよくわからないと感じている方にも、ぜひおすすめしたい一冊です!
『自分の頭で考える読書』概要
◆タイトル
自分の頭で考える読書
◆著者
荒木博行
◆出版社
日本実業出版社
◆発売日(初版)
2022年2月1日
目次
本書の目次構成は、以下の通りです。
【はじめに】~本との付き合い方~
【序章】変化の時代、「終身エンタメチャレンジ」の扉を開けよう
【第1章】なぜ今、本なのか?
【第2章】どんな本を選ぶのか?
【第3章】本を通して「問い」を育てる
【第4章】「読書の病」を治療しよう
【第5章】「読書が役に立つ」とは、どういうことか?
【第6章】「本を読む」とは、自らを生きるということ
【おわりに】~「道を開く読書」の本質~
著者はどんな人?
荒木博行氏のプロフィールです。
株式会社学びデザイン代表取締役。
住友商事、グロービス(経営大学院副研究科長)を経て、株式会社学びデザインを設立。フライヤーやNOKIOOなどの企業のアドバイザーとして関わる他、絵本ナビの社外監査役、武蔵野大学で教員なども努める。
著書に『自分の頭で考える読書』、『藁を手に旅に出よう』、『見るだけでわかる! ビジネス書図鑑』、『世界「倒産」図鑑』『世界「失敗」製品図鑑』など多数。
Voicy「荒木博行のbook cafe」毎朝放送中。Podcast「超相対性理論」でパーソナリティを務める。
Amazonのページより
本好きな方なら、本の要約サイト「フライヤー」に関わった方というと、「へぇ~」と感じるかもしれません。
経営の分野での多彩なご活躍が目立ちますが、実はこの方、イラストも描かれるのだそうで。
本書でもご自身作の挿絵が効果的に使われていて、とてもチャーミングでした!
『自分の頭で考える読書』印象に残る3つのポイント
1.本は非効率!だからこそ素晴らしい!
本書を読んで「いいな」と感じた点の一つは、本の魅力や読書の楽しさについて、改めて立ち止まって深く考えるきっかけになること。
「そもそも本って何がそんなに優れているの…?」
「読書にはどんな意味があるのだろう…?」
など、多くの人が(おそらく)わかっているようでハッキリとわかっていない疑問と向き合います。
そして、それらの疑問を一つひとつ解決しながら「納得感」が得られる構成となっています。
第1章で語られるのは「なぜ今、本なのか?」というテーマ。
ここで筆者はこう語っています。
本の最大の魅力というのは、やや逆説的ですが、「魅力的ではない」という点にあります。
『自分の頭で考える読書』p48
おや?と思う表現で、いきなり惹きつけられます。
この文章の引用だけではちょっとわかりづらいと思うので、少しだけ補足します。
現代では何か情報を入手したいと思ったら、SNSを使ったり、YouTubeの解説動画を見たりする人が多いですよね。
実際、その行為は圧倒的に効率的で、しかも「わかりやすい」と感じる人も多いはず。
しかも動画の場合には「映像」と「音」の両方があるので、視覚と聴覚を同時にフル回転させ、短時間でかなりの情報を手に入れることができます。
それに比べて、本は、ものすごく非効率。
読むのにも時間がかかりますし(人によって差はありますが)、1ページに記載される情報量にも限りがある、文字通り「余白」が多いメディアです。
しかし、だからこそ、そこに自分自身の「思考」を取り入れることができます。
文章を追いながら深く思考を巡らせていく行為や時間が、本に没頭するきっかけになっていくと、著者は語ります。
さらに、自身の「体験」を本の「余白」に重ねていくことで、本はいろいろな意味を持つようになります。
自分がいろんなことを経験すればするほど思考にも深みが出て、本から受ける印象や、学べることも変わる、というわけです。
たしかに、同じ本でも、昔読んだときと今読んだときでは感じ方が異なることがよくあります。
こういった話について、本書では「本は「読み手」によってはじめて命を与えられる」という言葉で表現されています。
「本」は自分次第で解釈や意味付けを変えていくことができる、とても自由度の高いメディア。
それこそが本の魅力なのだと、著者は言うのです。
本には「余白」という、本ならではの良さがあることを、あらためて実感できます。
2.本は3つのカテゴリーに分類できる
本書は、いわゆる「読書術」の本ではありません。
「読書はスキマ時間で」
とか
「タイマーをセットして読もう」
みたいな、ノウハウ本とは一線を画しています。
本の読み方に絶対的な正解はなく、あくまでも個々に委ねられるもの。
その前提で、読書の大家である著者が「本とどう付き合っていけば心が豊かになれるのか」を優しく伝えてくれる、そんなイメージです。
ただ、第2章では「本の選び方」についてのポイント・実践的なコツが書かれています。
筆者によると、本は大きく以下の3つのカテゴリーに分けることができます。
- 新たな「問い」を学べる本:今までに考えたこともなかった「問い」を提示してくれる本
- 新たな「答え」を学べる本:今までに考えたこともなかった「答え」を提示してくれる本
- 「既知のリマインド」に役立つ本:「既存の答え」をあらためて提示してくれる本
もう少し詳しく説明しますね。
「既知のリマインド」に偏らないためにはどうすればいい?
筆者は、一般的に上記で挙げた3つのカテゴリーのうち、3つめの「既知のリマインド(すでに知っていることの再確認)」に偏って本を選ぶ人が多いと言います。
その理由は、「①問いの発見」や「②答えの発見」に分類される本は、自分自身がまだ知らないこと・気付いていないことに触れる要素が大きいので、どうしても疲れてしまうから。
一方、「既知のリマインド」は、すでに自分が知っていることを再確認できる本を意味します。
そういう本はスーッと楽に読みやすく、楽に理解できるので、多くの人がついつい手にとってしまいがちというわけです。
もちろん、決して「既知のリマインド」がNGではありません。
筆者は、本選びの際には「3つのカテゴリーのバランスを意識することが大切」と提唱します。これは新たな気づきでした。
筆者が語る「本選び」に関するさらに詳しいお話は、ぜひ本書を手に取ってチェックしてみてください!
3.結局「自分の頭で考える読書」とは?
本書のタイトル「自分の頭で考える読書」とは、いったいどういうことなのでしょうか?
明確な答えは本文を通して読んでいくとよくわかるのですが、ここではそのヒントにつながる「第6章」の内容を少しご紹介したいと思います。
第6章の見出しは「「本を読む」とは、自らを生きるということ」。
冒頭では哲学者・ショーペンハウワーの言葉を引用し、人間の本との向き合い方として、自分を見失ってしまうような読書スタイルは危険ということが書かれています。
息継ぎもせず、消費するような読書スタイルをし続けるのであれば、思想が支配されていくという危機感を持つべきだと思います。
『自分の頭で考える読書』p200
私のように本を多く読む人ほど、「本に読まれてしまう読書」に陥らないように気をつけるべきなのです。
『自分の頭で考える読書』p201
これだけだとややわかりづいらと思うので、筆者が言わんとしていることを簡単にまとめてみます。
- 本は、他人の思想や考えに触れることができるツールである
- つまり「思考停止」状態で本に触れ続けることは、他人に精神を支配されるのと同じようなものだ
- そうなると、自らが「本を読んでいる」のではなく、「本に読まれてしまっている」状態に陥ってしまう
上記のことから、著者の荒木さんは、自分の頭で読書をするためには、常に「なぜだろう?」「どういうことだろう?」という「懐疑」の姿勢を持つことが大切だと言います。
具体的には、良書に触れて共感したり興奮したりする「熱狂」が7割、本の内容に「ちょっと待った!」と思う「懐疑」が3割くらいのバランスが理想的と書かれていました。
単純に言い換えると、本に書いてあることを何も考えず全部鵜呑みにするようなスタイルはNG(その状態だと、本当の意味で自分の人生を生きるのは難しい)ということだと解釈しました。
『自分の頭で考える読書』を読んで気づいたこと・学び
本書を読んで、個人的に「ためになった!」「とても良かった!」と感じたことをまとめてみます。
- 便利な現代社会に、あえて非効率な本を読む魅力・メリットは確実にある
- 人は、意識しないと「知っていることを再確認する本」ばかりを読んでしまいがち(世界が広がらない)
- 読書の際には本と良い距離感を保つことが重要。それが「自分らしく生きる」ことにもつながる
本なんて、別に深く考えずに好きに読めばいいんじゃないの?という声もあるでしょう。
もちろん、基本的には好きなものを自由に読めばいいと、私も思います。
ただ、時間は有限です。少しでも有意義な読書体験を得たい方、自分の人生そのものを豊かにしたい方には、ぜひ本書に目を通してみてほしいです!
本は大好き!という人も、これまで考えもしなかった気づきを得られるはずです。まさに読書の楽しみを広げてくれる一冊!
『自分の頭で考える読書』まとめ
筆者は本書において、情報量が圧倒的に多いYouTubeなどと比較し、「余白がふんだんにあること」こそが本の魅力だと述べています。
その「余白」に自分の思考をふんだんに入れ込めるメディアは、「本」以外にはそう多くありません。
ITの進歩で生活の便利さはどんどん向上する反面、簡単に「わかった気」になってしまいがちな現代社会。
しっかりと頭を使い、自分の人生を豊かに生きること。
この時代に、あえて「非効率」といわれる読書をすることの意義・重要性をあらためて感じることができました。
読書をすると、簡単には解決できない疑問や新たな想いが生まれることが多々あります。
そのようなさまざまな「問い」や「答え」を頭にめぐらせて、それらに一つひとつ真剣に向き合いながら生きていく中で人は成長できるのだな、幅が広がっていくのだなと、あらためて考えさせられました。