【本紹介・レビュー】安達裕哉著『頭のいい人が話す前に考えていること』◆「上手な話し方」よりも大切なこととは?

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本日ご紹介する本は、安達裕哉著『頭のいい人が話す前に考えていること』
2023年 年間ベストセラー1位(※)」を獲得した話題作(※ビジネス書単行本/日販・トーハン調べ)です。

「一生懸命に自分の考えや思いを伝えているのに、いつもちゃんと伝わらない…」
「仕事でもプライベートでも、周りの人とのコミュニケーションで苦労してしまう…」

そんなモヤモヤを感じている方に、ぜひおすすめしたい一冊。

この記事を書いている私も、2023年に読んだビジネス書の中では最も印象に残り、今後も大切にしたいと思える一冊だったなと感じています。

やまもも

頭のいい人は他人から信頼され、そして他人と上手にコミュニケーションをとりながら、自分らしく幸せに生きることができるのだと実感できました。

日々、あらゆる場面で「コミュ力」を発揮せざるを得ないビジネスパーソンの方から、家族・友人など身近な人との接し方に思い悩む方まで、さまざまな立場・境遇の方に読んでいただきたい本です。

目次

『頭のいい人が話す前に考えていること』概要

◆タイトル
頭のいい人が話す前に考えていること

◆著者
安達裕哉

◆出版社
ダイヤモンド社

◆発売日(初版)
2023年4月19日

目次

本書の目次構成は、以下の通りです。

【はじめに】
【第1部】頭のいい人が話す前に考えていること ―「知性」と「信頼」を同時にもたらす<7つの黄金法則>
 その1 頭が悪くなる瞬間、頭がよくなる時間
 その2 頭のよさを決めるのは「だれ」だ?
 その3 なぜ、コンサルは入社1年目でもその道30年の社長にアドバイスできるのか?
 その4 頭のいい人は、論破しない
 その5 「話し方」だけうまくなるな
 その6 知識が「知性」に変わるとき
 その7 承認欲求をコントロールできる者がコミュニケーションの強者になれる
【第2部】 一気に頭のいい人になれる思考の深め方 ―「知性」と「信頼」を同時にもたらす5つの思考法
 第1章 まずは、バカな話し方をやめる ――客観視」の思考法
 第2章 なぜ、頭のいい人の話はわかりやすいのか? ――「整理」の思考法
 第3章 ちゃんと考える前に、ちゃんと聞こう ――「傾聴」の思考法
 第4章 深く聞く技術と教わる技術 ――「質問」の思考法
 第5章 最後に言葉にしてインパクトを残す ――「言語化」の思考法
【おわりに】

著者はどんな人?

著者・安達裕哉(あだちゆうや)氏のプロフィールです。

ティネクト株式会社 代表取締役

1975年生まれ。筑波大学大学院環境科学研究科修了後、理系研究職の道を諦め、給料が少し高いという理由でデロイト トーマツ コンサルティング(現アビームコンサルティング)に入社。品質マネジメント、人事などの分野でコンサルティングに従事し、その後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサルティング部門の立ち上げに参画。大阪支社長、東京支社長を歴任したのちに独立。現在はマーケティング会社「ティネクト株式会社」の経営者として、コンサルティング、webメディアの運営支援、記事執筆などを行う。また、個人ブログとして始めた「Books&Apps」が“本質的でためになる”と話題になり、今では累計1億2000万PVを誇る知る人ぞ知るビジネスメディアに。

「Amazon.co.jp」販売ページ より引用

安達さんは、元コンサルマン。
この輝かしいプロフィールを見る限り、ものすごく頭がキレる方で、本でも小難しい話をあれこれ語るのかな…とイメージする方もいるでしょう。

しかし、本書の内容は決して理解し難いものではありません。

どんな話題も「ものすごく丁寧に、筋道を立てて、わかりやすく」伝えてくれています。
この本を読むと、「本当の頭のいい人とは、まさにこういう人なんだ」と実感できるはずです。


個人的な話を少しさせてもらうと、私が安達さんという方を知ったのは、安達さんが代表を勤めるティネクト株式会社が運営するメディア『Books&Apps』の記事に、たまたまWeb検索でたどり着いたのがきっかけでした。

このメディアのキャッチコピーは「ビジネスパーソンを励ますwebメディア」。
何名かのライターの方が、日替わりのような形でコラム記事を投稿しています。

テーマはビジネス系が多いように感じますが、日によっては社会問題を扱っていたり、雑記的な記事もあったり。

各ライターさんの個性が出ていて非常に興味深いのですが、日々コラム記事を読む中で、いつも「あ、この内容いいな」と感じるのが安達さんが執筆されたコラムだったんです。

そこから「安達さんってどういう方なんだろう?」とさかのぼって調べる中で、本書に出会いました。

安達さんが書かれる文章は一貫して、とてもわかりやすいです。また、ただ正論を語るだけではなく、読者の心を掴むポイントを押さえているというか、グッときます。

やまもも

そんな安達さんが書かれた本書の魅力をお伝えしたいと思い、少し語ってしまいました…(汗)

『頭のいい人が話す前に考えていること』印象に残る3つのポイント

ここでは、とくに印象に残ったポイントを3つピックアップしてご紹介します。

1.大人の社会における「頭がいい」とは?

本書は、大きく2部構成となっています。

第1部」は、まず「頭のいい人」になるためのマインド面を鍛える部。
そして「第2部」は、本格的に「頭のいい人」の具体的な思考法を身につけていく、いわば実践の部です。

植物に例えて、この第1部で身につけるマインドは「根っこ」、第2部の実践編は「幹」のようなものだと表現されています。

ガッシリとした根を張らなければ、植物は強く大きく成長せず、美しい花も咲きません。
まずは根っこをきちんと張るために、第1部で学ぶのが「7つの黄金法則」です。

「7つの黄金法則」では、まず「頭のいい人とそうでない人はどこが違うのか?」「頭のいい人とは、どんな思考で物事を捉え、向き合っているのか?」を知ることができます。

なお、本書を通して語られる「頭のよさ」とは、学生時代に評価のモノサシとしてよく使われる「学力が優れている」だとか「偏差値が高い」といったものとは異なります。

ここでいう頭のよさは、仕事にプライベートに、いろんな人と上手にコミュニケーションをとりながら、円滑に事を運ばせることができる、いわば「社会的な頭のよさ」。

7つの黄金法則そのものは、ぜひ本書を読んで学んでいただければと思いますが、ここではひとつ強く印象に残ったものを紹介します。

それは、
(社会的な)頭のよさは、常に他人が決める
ということ。

仕事でも、プライベートでも、どれだけ自分が一生懸命に話したとしても、相手に意図や想いが伝わらなければ意味がありません。

また、そもそも自分の話が「相手のため」になっていなければ、相手の信頼を得ることはできず、決して「頭がいい」と思われることもないのです。

また、著者の安達さんはこのようにも言っています。

決して話し方がうまくなくても「頭のいい人」を目指すことはできる。ちゃんと考えることで、他人に信頼され「頭のいい人」とみなされる人間になれる、と。

やまもも

実際、著者はもともと口下手で、コミュニケーションも得意ではなかったのだそう。それでもコンサルタントとして成果を上げることができていたのは、「相手のため」を真剣に考えていたからだと。

第1部の「7つの黄金法則」を通じて、「本当に社会で役立つコミュニケーション能力」を高めるために大切なマインドを、土台からガッチリと固めていくことができます。

2.賢いふりでは、人の心は動かせない

「黄金法則」を学んでマインド面が整ったら、第2部へと進みます。

第2部のタイトルは「一気に頭のいい人になる思考の深め方」。
「知性」と「信頼」を同時にもたらす5つの思考法』が紹介されます。

  1. まずは、バカな話し方をやめる
  2. なぜ、頭のいい人の話はわかりやすいのか?
  3. ちゃんと考える前に、ちゃんと聞こう
  4. 深く聞く技術と教わる技術
  5. 最後に言葉にしてインパクトを残す

上記1つめの「まずは、バカな話し方をやめる」の中に、「言葉に敏感たれ」という話題が出てきます。

どういうことでしょうか?
自分なりに簡単にまとめると、ここで問われているのは、日頃から自分が使う言葉を一つひとつの意味をきちんと理解して使っていますか?ということ。

言葉の使い方がいい加減だったり、曖昧なままなんとなく使っている人は、賢いふりをしたバカに見えてしまう(つまり、「頭のいい人」ではない)と、著者はいうのです。

曖昧な理解で言葉を使いがちな例として出てくるのが、外来語、いわゆるカタカナ言葉です。

たとえば、あなたが会社で「ディスカッションをしましょう」という提案をするとします。

このとき、発信者であるあなたは、「この“ディスカッション”とは“議論”なのか?それとも単なる“アイデア出し”なのか?」、自分で明確に理解したうえで口にしているでしょうか?

単なる「話し合いの場」みたいなものぼんやりイメージして、あまり深く考えず、とりあえず「ディスカッション」と口にする方もいるのではないでしょうか。

上記のような場面は、実際にビジネスの場ではよくあると思います。

しかし、こういった曖昧な言葉の使い方をしていると、ディスカッションを「“議論”だと考えているAさん」と「“アイデアを自由に出せばいいだけ”と考えているBさん」のやり取りでは、歯車が嚙み合わなくなるかもしれません。

もうひとつ、本書では別の例として、誰もが頻繁に使う「コミュニケーション」という言葉についても取り上げています。

この言葉は「対面で会話をすること」と考えている人もいれば、「メールやチャットも含めたやり取り全般」をイメージする人もいます。

もちろん、言葉がどんな意味を示すかは、個々の考えだけではなく、文脈や状況によっても変わるでしょう。しかし、いずれにしても頭のいい人は、それらも考慮したうえで「どの言葉を使うか?」を考えているのです。

これらはほんの一例であり、ニーズ、ローンチ、イノベーション…など、ビジネスの場などでとりあえず使いがちなカタカナ言葉は、身近にたくさんありますよね。

このようなカタカナ言葉を安易に、そして意味を明確にせずに使い過ぎると、“賢いふりをしたバカに見えてしまう”と筆者は語ります。

そして「賢いふりでは、人の心は動かせない」とも。

言葉の定義に曖昧なまま話すということは、古いスマホやガラケーの低い解像度の写真を見せているようなものです。これでは、伝えたいことも伝わりませんし、心が動いて感動することもありません。

(中略)

“なんとなく考えている”ことを“ちゃんと考える”に転化するには、言葉の定義を明確にし、思考の解像度を上げる必要があるのです。

『頭のいい人が話す前に考えていること』
やまもも

なんとなくそれっぽい言葉を発する人と、言葉の意味を深く考えてから口にする人とでは、「思考の深さ」があまりに違うのだと実感できました。当然、信頼されるのは後者の人です。

3.「聞く」と「ちゃんと聞く」には大きな違いがある

第2部で語られる『「知性」と「信頼」を同時にもたらす5つの思考法』の3つめでは「話の聞き方」を扱っています。

「話し方」ではなく「聞き方」に重きが置かれているのは、まずきちんと人の話を聞くことができなければ、頭のいい話し方はできないから

このセクションを読むと「頭のいい人は、いかに聞く技術に長けているか」がわかります。

ここで著者は、人が話を聞こうとする場合、「自分の言いたいことを考えながら聞く人」と「相手の言いたいことを考えながら聞く人」のどちらかに分かれるといいます。

前者の人は、一見、相手の話を聞いているように見えます。

しかし、そういう人は、話を聞きながらも「もっとこうすればいいのに…」だとか「いやいや、それは間違っているよね」といったように、自分が言いたいことや反論したいこと、あるいは解決策などを考えています。

一方、後者の人は、自分がどう思うかはさておき、まず本当に相手が言いたいことを正確に理解しようとします

相手が言いたいことを理解するために、大事にしたいポイントは以下の通り。

  • 肯定も否定もしない
  • 相手を評価しない
  • 意見を安易に言わない
  • 話が途切れたら、むしろ沈黙する
  • 自分の好奇心を総動員する

この「話の聞き方」に関するセクションを読むと、「話を聞く」と「ちゃんと聞く」には明確な違いがあることがわかります。
そして、「頭がいい!信頼できる!」と思われる人は、間違いなく「ちゃんと聞く」技術を持っていることも。

本編では「話をちゃんと聞く」ための傾聴の方法や、相手が本当に求めていることを引き出す質問法などの、具体的なコツまで紹介されています。

やまもも

他に解説されている思考法についても、どれも実生活で役立つ大事な話ばかりです。

『頭のいい人が話す前に考えていること』を読んで気づいたこと・学び

著者は本書の中で、ちゃんと考えている人と考えていない人の差は、思考の「量」ではなく「質」であると、はっきり語っています。

つまり、大人の社会で“頭がいい”と思われる人間になるためには、「思考の質」をいかに高めるかが重要。

そのために必要なマインドと具体的な訓練法(実践ポイント)が一から段階的に理解できるよう、丁寧に解説されている本でした。

やまもも

本全体を通して、「本当に相手のためになるか?」を深く考えていくことの重要性が、さまざまな角度で語られていると感じました。
これこそが、他人と円滑なコミュニケーションをとるうえで、最も大事なことなのだと思います。

あとがき(おわりに)部分には、「身近な人にこそ丁寧なコミュニケーションを心がけてほしい」ということが書かれています。

本当に頭のいい人とは、大切な人を大切にできる人だと思います。
経営者でもそういう人こそ、周りから慕われていました。
大切な人を大切にするために、丁寧で知的なコミュニケーションを心がけてください。

『頭のいい人が話す前に考えていること』

もうひとつ、本後半には「頭のいい人になることよりも、頭のいい人であり続けることのほうが難しい」という一節があります。

著者の実体験も挙げながら、「人間、わかった気になったときが一番危ないと自覚し、丁寧なコミュニケーションを心がけることが大切。そのために、根っこである「7つの黄金法則」に何度も立ち返ろう」と、著者は語ります。

やまもも

著者の謙虚で真摯な姿勢が伝わってきました。
他人から信頼される頭のいい人間であり続けるには、驕りの気持ちを持たないように気をつけなければならないのだなと実感。

『頭のいい人が話す前に考えていること』まとめ

2023年ビジネス書のベストセラーに選ばれた本書。

ビジネスの場はもちろんですが、プライベートを含め、さまざまな人たちと関わり合い、コミュニケーションをとりながら心豊かに生きていくための指針となる本だと感じました。

ここに書いてあることを徹底的に自分の中に落とし込み、実践し続けていくのは決して簡単な道のりではないかもしれません。

でも、まずは知ろうとすること、そして目指す姿に近づくために必要なマインドを身につけていくことが大事だと感じました。

そして本書で得た知識・ノウハウを実生活で少しずつ試していくことで、きっと身近な人との関係も変わっていくと思います。

やまもも

私もちょっとずつですが本書の内容を意識し、実践しています。ある程度時間が経ったタイミングで何度も読み返したいです。

どんな方にも役立つ一冊だと感じるので、まだチェックしていない方は、ぜひ読んでみてください!

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