かつて「NOと言えない日本人」なんていう言葉が流行りましたが、事実、断るのが苦手という人はきっと少なくないでしょう。
ですが、私たちの日常生活では、断らなくてはならない場面は想像以上にたくさんあるものです。
断りたくはないけれど、断るしかない。
そんな状況で勇気を振り絞って断ってはみたものの、なぜだか罪悪感に苛まれ、モヤモヤとしてしまうことも…。
上手な断り方のスキルを身につけることは対人関係に役立つだけでなく、自分自身の気持ちを楽にすることにもつながります。
そこで、この記事では「断り方」をテーマにしたおすすめの本を5冊紹介します。
この記事を書いている私も、もともと断ることは苦手。なので、いろんな本を読んできました。
「断るスキル」そのものを学べる本のほか、自分の気持ちに正直に生きることの大切さを教えてくれる本など、さまざまな視点から「断ること」の助けになる本を集めました。
- 断るのがどうしても苦手
- 自分の正直な気持ちを他人にうまく伝えられない
- 人を傷つけるのが怖い
このような人に参考にしていただければ幸いです。
「断り方」のマインド・スキルを学べる本5選
「断り方」を身につけるのに役立つおすすめの本は、以下の5冊です。
- 『本音で生きる 一秒も後悔しない強い生き方』
- 『なぜか印象がよくなるすごい断り方』
- 『私を振り回してくるあの人から自分を守る本』
- 『「また断れなかった…」がなくなる本』
- 『我慢して生きるほど人生は長くない』
これら5冊の本を通して「断れない人が断れるようになるために身につけるべき考え方」を知ることができます。
具体的な断り方を学べる本や、断ることで人生がどう変わっていくのか?を考えるきっかけになる本も紹介しています。
では、これらの本の特徴について詳しく解説します!
①『本音で生きる 一秒も後悔しない強い生き方』
まずご紹介するのは、堀江貴文(ホリエモン)著『本音で生きる 一秒も後悔しない強い生き方』です。
タイトルの通り、本心を大事にし、本音を隠さずに生きることについてホリエモンが持論を語っている一冊。
本書に従えば、「自分が嫌だと感じることや気乗りしないことは、しっかり断るべき」となります。
「それができたらどんなに楽か…」
きっと多くの人は、そんなふうに思うでしょう。
もしくは「ホリエモンだから、嫌とかやりたくないとかをハッキリ言えるんでしょ?」と思う方もいるかもしれません。
でも、よくよく本書を読んでいくと、ホリエモンは決して突飛なことを言っているわけではないのです。
グサッとくるフレーズはたくさんあるのですが、いくつかポイントをまとめると…
- 本音を隠して人に合わせる人生は楽しいのか?
- 他者への気遣いは当然。そのうえで、自分が言いたいことを言うことの何が悪いのか?
- はっきり意見を言い合って「お互いの価値観が異なっていることがわかる」のは大事なこと。
本書では、冒頭から終わりまで一貫してシンプルかつ強烈な言葉で、「私たちは本音をもっと大事に扱わなくてはならない」ということを伝えています。
また、人との距離感の取り方や、人付き合いについての話も考えさせられます。
たとえば、こんな「問い」があります。
ホリエモンは「後者のほうが、より深い人間関係を築ける」と考えています。個人的には、ものすごく腑に落ちました。
それでも「いやいや、大人なんだから空気読んだり、周囲に合わせなきゃならない場面もあるし…」などと思う人こそ、ぜひ本書を読んでみてほしいです。
周囲の「空気」や同調圧力など気にしてもしょうがない。同調圧力をかけてくる奴らは気持ち悪いが、それを気にして同調するのも同じくらいに気持ちが悪い。
堀江貴文『本音で生きる 一秒も後悔しない強い生き方』2016年, SB新書(電子書籍版)
やや言葉がキツイところもありますが、凝り固まった思考を一度壊すうえではおすすめ。
本書の内容を「ホリエモンだからできるんでしょ!」だけで終わらせてしまうのはもったいないかな、と思います。
「本音を言うのは悪いことだ!」と思ってしまう人
②『なぜか印象がよくなるすごい断り方』
断ることが苦手になってしまう大きな理由は、「断ると嫌われそうだから…」ではないでしょうか。
そんな人にぜひ読んでいただきたいのが、津田卓也著『なぜか印象がよくなるすごい断り方』です。
著者の津田卓也さんは、企業研修や人材育成の会社の代表であり、クレーム対応などの研修講師としても活躍されている方。
その昔、ご自身が会社員だったときには、断れずに働き過ぎて“死”を覚悟するほどすり減った経験があるそうです。
津田さんは、本書の冒頭でこう語っています。
人生は、有限です。有限な人生で、やるべきことはたくさんあります。断ることは、そんな有限な人生に余白を作ることだと私は思います。余白があるから新しいものが入ってくる。今までの自分を変えたいと思うなら、ぜひとも断ることからはじめてほしいのです。
津田卓也『なぜか印象がよくなるすごい断り方』2020年, サンマーク出版
単に断り方のテクニックを学ぶだけではありません。
断ることがなぜ必要なのか、そして断ることで人生がどう変わっていくのかを、根本から考えられる本となっています。
よい断り方を身につければ、何でも「YES」と答える人よりずっと信頼される人間になれるという考え方は、心に刺さりました。
本書の構成は、以下の通り。
- 第1章 まずは、思い込みを捨てよう
→「断れない人」が陥りがちな思考パターンを解説 - 第2章 印象がよくなるすごい断り方の基本7ルール
→印象よく断るために必要なこととは何かを知る - 第3章 手ごわい相手の対処法
→簡単には断るのは難しい人、やっかいな相手にはどう対処すべきか? - 第4章 断るか、断らないかはどうやって決めるのか?
→きちんと断るために自分なりの“基準”を持つべし
「断る」というテーマを通じて、「自分自身が本当に大切にしたいことは何か?」を考えるきっかけにもなる一冊です。
断ると嫌われるのではないか?と恐怖心があり、つい嫌なことまで引き受けてしまう人
③『私を振り回してくるあの人から自分を守る本』
モラハラ対策カウンセラー・Joe著『私を振り回してくるあの人から自分を守る本』をご紹介します。
本書を最もおすすめしたいのは、「いつも他人から都合のいいように利用されてしまう」「嫌なことを押しつけられてばかり…」と悩む人。
なぜそんな状態になってしまうのか、本書では、そこから脱却するための解決策を学べます。
構成は以下の通りです。
- method1
“誰にも付け入らせないベースをつくる” - method2
“嫌われない、憎まれない「断り上手」になる” - method3
“「ばれない威圧感」で相手を引かせる” - method4
“人を惹きつける魅力的な人間になる”
「他人に振り回されない方法をテーマにした本ではありますが、method2では「断り方」についての解説も!
断るのが苦手という人は、つい自分の言葉や態度などに「隙」が生まれやすく、それが振り回される大きな原因になってしまっていることも。
そんな負のスパイラルから抜け出すにはどんな行動をとればよいのか、実践的アドバイスが書かれています。
さらに「断り上手」な人が、日頃から意識的に(あるいは無意識に)コミュニケーションの中で実践しているポイントも紹介されています。
自分らしく良好な人間関係を築けるようになりたいと考える人に役立つ一冊です。
人から振り回されることにうんざりしている人
④『「また断れなかった…」がなくなる本』
石原加受子著『「また断れなかった…」がなくなる本』をご紹介します。
「頼まれると嫌とは言えない」「また断れずに嫌な気持ちになってしまった…」
そんな負のループから脱するために必要な考え方や行動について、心理カウンセラーの石原加受子さんが語っています。
本書の特徴は、「断れない」という悩みを解決するために、石原さんが開発した「自分中心心理学」という独自メソッドを学べること。
「自分中心」と言うと、つい“勝手な人”というネガティブなイメージを抱くかもしれません。
しかし、ここでいう「自分中心」とは、人を傷つけたり人から奪い取ったりする「自己中心(ジコチュー)」とは異なる概念です。
自分中心は、「自分を傷つけない。自分を丁寧に扱う。そして、どんな自分であっても、“私は、私を愛している”」という状態を目指すものです。
石原加受子『「また断れなかった…」がなくなる本』2020年, 河出書房新社
いつも断れない人は、「自分中心」の反対にある「他者中心」の視点になってしまっていると、石原さんは言います。
「他者中心の視点」とは?
簡単にいえば、自分よりも、他者や外側に重きを置き、一般常識や規範、ルールに自分を適応させようとしてしまうこと。
それが自分の本当の気持ちや感情、欲求を抑え込む原因になって、「自分がどう感じるか」よりも「正しい・正しくない」で物事を判断することにもなってしまうのだ、と。
だからこそ、以下のように考えることが大切になってきます。
自分中心の考え方を持ち、自分の感情を大切にすれば自分を認められるようになる。
↓
すると「私はこう思う、こう感じる」と言うことが怖くなくなり、きちんと断れるようになる。
本書の大きなポイントは「他者中心の意識」と「自分中心の意識」の違いについて知ること。
個人的には、他者とほどよい距離感で接していくコツまで知ることができるのいいなと思いました。
他人を優先してしまい、自分がどうしたいのかわからなくなってしまう人
⑤『我慢して生きるほど人生は長くない』
刺激的なタイトルが目を引く一冊、鈴木裕介著『我慢して生きるほど人生は長くない』をご紹介します。
著者の鈴木裕介さんは、内科医・心療内科医として活躍されてきた方。
自らメンタルヘルス関連の団体も立ち上げて、さまざまな悩み・苦しみを抱える人たちの心を助けてきたそうです。
本書では、自分の自尊心を守るために、ときにはきちんとNOを言い「お断り」をすることがいかに大切か、心理学的な側面からわかりやすく、やさしい口調で解説してくれます。
NOをアピールすることは、心身ともに穏やかな状態を実現し、自分が望む通りに生きるための最重要スキルだとも。
本書は、以下の構成となっています。
- Contents 1
我慢せず生きていくための公平で安心な人間関係の作り方 - Contents 2
会社や社会に疲れてしまった人への処方箋 - Contents 3
思い込みを捨て、自分らしい人生を取り戻す - Contents 4
誰にも振り回されず、自己肯定感を保つには - Contents 5
「心地良くない」「楽しくない」と感じたものは捨てていく
「断ること」に関して、本書内でとくに参考になったのは「罪悪感」に関する話題でした。
断れない人は、つい「断ったら申し訳ない…」という罪悪感を抱きがち。
ですが、その罪悪感とは、実は自分勝手(自分の思い込み)な感情なのだと鈴木さんは言います。
自分の利益や自尊心を守るためには、自分が望まないこと、心地良いと思えないことについて、勇気をもって断っていくスタンスを持つことが大事。
すると、少しずつ断ることに慣れて、必要のない罪悪感を抱くこともなくなっていくのだそうです。
だからといって、そんな簡単には「NO」とは言えないものですよね。そこで本書では「断るためにどうすべきか?」についての具体的な行動についてまで語られています。
たとえば…
自分と他人との境界線を正しく引くことの重要性や、自己肯定感を持つためにどうすればいいのかなど。
本書を読めば、我慢をすることなく、自分らしいルールで楽に生きるためのヒントが掴めるかもしれません。
ちなみに、断ることが苦手な人は、同時に「頼むことも苦手」な場合が多いと鈴木さんは指摘します。
それも「自己肯定感」と密接に結びついているそうで、その辺りの話も興味深かったです。
他人の感情を優先しているうちに心が疲れてしまった人
まとめ:「断り方」を学び、より自然体でいられる人間関係を築こう
今回は「断り方」をテーマにした本を5冊紹介しました。
どの本も、単なる小手先のスキルだけを学ぶのではなく、「断ることがなぜ大切なのか」や、「正しく断るために自分の思考パターンをどう変えていく必要があるのか」などを、本質から考えることができます。
上手に断ることができるようになれば、よりよい人間関係を築けるようになる。
これらの本は、そんな希望も抱かせてくれます。
ご紹介した本が、ご自身の内面と深く向き合いながら「断り方」について理解を深めるきっかけになれば幸いです。