仕事の場からプライベートの時間まで、わたしたちは日々「話すこと・聞くこと」をたくさん繰り返しています。
「うまく話せない…」と悩む人も多いですが、実は「上手に話せる」よりも、「上手に聞ける」ようになるほうが、コミュニケーションはうまくいきやすいと言われます。
そこでこの記事では「話の聞き方」、つまり「傾聴」のスキルを磨く・高めるために役立つおすすめ本を5冊紹介します。
- 部下や同僚、友人、家族など、人の話を上手に聞けるようになりたい
- 傾聴スキルを鍛えてコミュニケーション力を高めたい
- 話を聞くことに苦手意識がある
このような人に参考にしていただければ幸いです。
聞く力・傾聴力を高めたい人におすすめの本5選
傾聴力アップにおすすめの本は、以下の5冊です。
- 『まず、ちゃんと聴く。 コミュニケーションの質が変わる「聴く」と「伝える」の黄金比』
- 『アクティブ・リスニング ビジネスに役立つ傾聴術』
- 『人を動かす傾聴力』
- 『話すより10倍ラク! 新 聞く会話術』
- 『優れたリーダーは、なぜ「傾聴力」を磨くのか?』
これら5冊の本を通して、話の聴き方、つまり傾聴のコツを学べます。
まず傾聴する際の心構え・姿勢を基本から身につけ、それを実践として繰り返すことにより、着実に傾聴力を磨くことができます。
では、これらの本の特徴について詳しく解説していきます!
①『まず、ちゃんと聴く。 コミュニケーションの質が変わる「聴く」と「伝える」の黄金比』
櫻井将著『まず、ちゃんと聴く。 コミュニケーションの質が変わる「聴く」と「伝える」の黄金比』をご紹介します。
著者の櫻井さんは、エール株式会社という企業の代表取締役であり、年間300回以上の「聴くこと」に関する講演・研修を実施されている方。
本書では、心理学・コーチング・カウンセリングなどのコミュニケーションの専門家としての知見や経験をもとに、「聴く」とは何か?ということから、「聴く行為」を通じて人間関係にどんな効果が生まれるのかを、丁寧に解説しています。
本書を読み進めれば、
- 「まず」
- 「ちゃんと」
- 「聴く」
タイトルについている、これら一つひとつの単語すべてに確かな意味があること、そしてこれらのすべてが、質の高いコミュニケーションをとる上で非常に重要なものであることが理解できます。
また、「傾聴」に関する本はたくさんありますが、本書の特徴的な点のひとつは、聴いた先にある「伝えること」についても、しっかりと触れていること。
実際、著者は「聴くだけでは解決しないこともある」と語っています。
だからこそ、本書では「聴く」の本質にしっかり触れ、「聴く技術」を磨くためのポイントを学ぶだけにとどまらず、「伝えること」も含めたコミュニケーションの質を高めるための考え方に、たくさんページが割かれています。
「聴くこと」と「伝えること」のバランスをどのようにとればいいのかや、それぞれを両立させるためのポイントなども学べます。
「聴く」と「伝える」についてフレームワーク化して説明されており、定義も明確。ふわっとした解説や精神論ではありません。
でも、全体を通して文章が非常にわかりやすく、読みやすくまとめられているので、挫折せずにスーッと読み進めることができます。
他の傾聴関連の本ではあまり出てこない考え方やポイントにも触れることができます。
私は本書を読んで「聴くこと」の素晴らしさを実感し、満たされた気持ちになりました。
ビジネスパーソンはもちろん、「聴くこと」の本質に触れ、ちゃんと聴ける人になりたいと考えるすべての人に、ぜひ手にとっていただきたい一冊です。
「聴くこと」の意義や効果を深く理解し、コミュニケーションの質を高めたい人
②『アクティブ・リスニング ビジネスに役立つ傾聴術』
戸田久実著『アクティブ・リスニング ビジネスに役立つ傾聴術』をご紹介します。
「アクティブ・リスニング」とは、日本語で表すと「積極的傾聴」。
「カウンセリングの神様」とも称される米国の臨床心理学者、カール・ロジャーズという人が提唱したカウンセリング技法です。
アクティブ・リスニングでは、話し手の言葉に耳を傾け、さらに、その背後にある意図や感情、本当の気持ちも理解し、共感を示すことが重視されます。
別の言い方をすると、積極的な傾聴とは、相手の話をきちんと聴いていることが、相手にも伝わるように表現する聴き方。
相手の心を真に理解しようとし、他者と深い信頼関係を築くために、アクティブ・リスニングは非常に重要なコミュニケーションの方法だと考えられています。
本書の目次は、以下の通り。
- 第1章 アクティブ・リスニングとは何か
- 第2章 アクティブ・リスニングの基本
- 第3章 アクティブ・リスニングの実践
- 第4章 仕事の現場でアクティブ・リスニングを活かす
- 第5章 プライベートの場で活用するアクティブ・リスニング
本書のタイトルでは「ビジネスに役立つ」とはあるものの、仕事の人間関係はもちろん、プライベートでの人との関わりなど、日常的に活用できる聞き方のコツまで紹介されています。
個人的に印象に残った点を、いくつか以下にまとめます。
- 人は誰でも「自分の話を聴いてほしい、理解し、共感してほしい」と思っている
- 実は、コミュニケーションの主導権は「聴き手」が握っている
- 親しい間柄こそアクティブ・リスニングが大事!
- 人の話を整理して理解するプロセスと、自分の話を整理するプロセスにおいては、同じ能力が必要
→人の話がきちんと聴けるようになると、自分の「ロジカルに話す力」もアップする
著者の戸田さんは、ビジネスコミュニケーション研修のプロフェッショナル。
ご自身の経験も踏まえた、現場で使いやすいアクティブ・リスニングの実践的スキルや考え方が本書では語られています。
ページ数もそこまで多くない(新書サイズで200ページほど)ので、アクティブ・リスニングの全体像をサクッと掴みやすいです。
内容も難解ではなく、かみ砕いて説明されているので、早い人なら1~2時間ほどで読み切れると思います!
深い信頼関係を築く「アクティブ・リスニング」の考え方やコツを基礎から学びたい人
③『人を動かす傾聴力』
林田康裕著『人を動かす傾聴力』をご紹介します。
本書の著者・林田さんは、「伴走型コンサルタント」として、相手の想いを根源から引き出す傾聴スキルをベースとした事業を展開されている方。
個人的に本書で印象的だったのは、
「傾聴をするときは、主役でも脇役でもなく、完全な裏方(黒子)になること」
という点。
「他者の話を聴くことを阻害してしまう要因」や、「“90%で聴くこと”と“100%で聴くこと”に、どれだけの違いがあるのか?」など、「本当に聴ける人間になるためのマインド」もたくさん学べます。
営業・セールス関連の仕事をしている人のほか、サービスや販売系の仕事をしている人にもおすすめです。
よく、傾聴のスキルとして「あいづちを打つ」「オウム返しをする」といった要素が語られますが、それはあくまでも表面的なスキルのひとつ。
本書では、スキルよりももっと深いところから「人の話を100%聴く」とはどういうことかが、非常にわかりやすく学べます。
また、本書では、上司や部下、セールスマンと商談相手、美容師とお客さんなど、さまざまなシーンやパターンでの会話例がたくさん出てきます。
傾聴の良い例・悪い例を具体的にイメージしやすいのも、おすすめポイントです。
営業・サービス業など、対人関係の仕事で活かせる傾聴力を身につけたい人
④『話すより10倍ラク! 新 聞く会話術』
西任暁子著『話すより10倍ラク! 新 聞く会話術』をご紹介します。
著者の西任さんは、ラジオDJとして、全国32のラジオ局で15年以上も番組を担当してきた方。
経営者をはじめ、俳優、スポーツ選手、映画監督、写真家など、のべ5000人以上にインタビューをしてきた、まさに「話を聞くこと」のエキスパートといえます。
そんな著者が、人の話をきちんと聞き、「コミュニケーションを心から楽しむための話の聞き方」を解説しているのが本書です。
- Chapter 1 相手を好きになる
- Chapter 2 相手が話しやすい場をつくる
- Chapter 3 褒めて心を開いてもらう
- Chapter 4 相手が話したいことを引き出す
- Chapter 5 話を盛り上げる
- Chapter 6 オンラインではどう話す?
最初のチャプターにあるように、西任さんによれば、相手の話をしっかり聞き、円滑なコミュニケーションをとるために大事なのは、まず「相手を好きになる」こと。
もちろん人間には相性があるので、苦手な人、あまり好きではない人と話さなくてはならないこともあるでしょう。
でも、どんな相手であっても、心から「いいな」と感じられるところ(見た目でも、服装でも、内面でも)を見つける努力をすることが大切だと、著者は話しています。
人の良さに目を向けていると、自分の良さも見えるようになってきます。相手は自分の鏡だからです。結果として、自分と一緒にいる一人の時間も楽しくなるでしょう。
西任暁子『話すより10倍ラク! 新 聞く会話術』ディスカヴァー・トゥエンティワン
苦手な人と話すときに心をラクにするための対処法、会話の場をあたためるコツ、相手の魅力を引き出す質問の仕方など、どんな人と接する際にも使えるポイントが盛りだくさん。
単なる傾聴のHow To的なことだけではなく、人との会話を楽しみ、自然に良い関係を築くために大切なことが、本書にはたくさん書かれています。
個人的には「オンラインでの話の聞き方」について触れられている点も、いいなと思いました!
他者とのコミュニケーションを心から楽しむためのコツを知りたい人
⑤『優れたリーダーは、なぜ「傾聴力」を磨くのか?』
最後に、ビジネスに振り切った傾聴関連の本を読みたい方におすすめの一冊、林健太郎著『優れたリーダーは、なぜ「傾聴力」を磨くのか?』をご紹介します。
著者の林健太郎さんは、「リーダー育成家」という肩書きで、経営者やビジネスリーダーに向けたコーチングを行う「エグゼクティブ・コーチ」として活躍されている方。
本書も、基本的にはビジネス界のリーダーに向けて、1on1ミーティングや職場でのやり取りの中で、部下の話を効果的に聞くための考え方・コツを教えてくれるものとなっています。
部下のタイプ別に、それぞれに対するベターな関わり方や質問の仕方のポイントなども、かなり詳細に解説されています。
部下のモチベーションアップや高い成果を出せるチームづくり、そして最近よく聞くようになった、職場の「心理的安全性」にも触れられているので、そのあたりを課題と感じている方には、とくにおすすめ。
また、上司自身が「自分の心の声を聞くこと」の重要性についても語られています。
自分の心の声をうまく聞けない上司は、部下の心の声もうまく聞けない。自分の心の声をないがしろにする上司は、部下の心の声もないがしろにしてしまうということです。
林健太郎『優れたリーダーは、なぜ「傾聴力」を磨くのか?』三笠書房
このあたりの話は、ギクッとする方もいるかもしれません。
部下を持つ人が、自分自身のあり方を省みる良いきっかけになる本だと感じました。
もちろん、本書では自分の感情と向き合って心の声を聞くためにどうすればいいのかまで、きちんと教えてくれるのでご安心を。
なお、最後の章では「部下」以外の話の聞き方…たとえば「友人やパートナー」「同僚」「チームメンバー」「お客様」「社会の人々」それぞれに向けた、話を聞くコツにも軽く触れられています。
部下など、自分より下の立場の人の話をきちんと聞けるようになりたい人
まとめ:聞く力を磨けば、コミュニケーションはもっとうまくいく。
この記事では、傾聴に関連する本を5冊紹介しました。
ここで挙げた本には傾聴のテクニックやスキルも出てきますが、「話を聴くことがなぜ大事なのか」「本当に相手の話を聴くとはどういうことか」など、本質にもきちんと触れられるものを選んでいます。
大事なポイントは共通していますが、複数の本を読むことで、いろいろな角度から話を聴くコツが掴みやすくなると思います。
気になるものがあれば、ぜひチェックしてみてくださいね。